この記事は2024年3月29日に「きんざいOnline:週刊金融財政事情」で公開された「24年は原油がボックス相場、金は将来を織り込み堅調維持」を一部編集し、転載したものです。


24年は原油がボックス相場、金は将来を織り込み堅調維持
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足元のWTI原油先物価格は1バレル=80ドル付近で推移している(図表)。需給面では中国需要の減速懸念がくすぶるなか、1月の寒波による北米生産量低下のほか、OPECプラスの一部の自主減産等から価格が反発。不安を抱えたままの中東情勢により、タンカー不足の深刻化に加え、紅海の航行停滞も継続している。ハマスとイスラエルの停戦協議が進展すれば、いったんは上昇一服となる様相だ。

当面、原油市場はボックス相場を見込む。米エネルギー情報局(EIA)は、3月月報で2024年4~6月期は日量86.6万バレルの供給不足に陥るものの、25年1~3月期にかけて需給がほぼ均衡すると予想する。OPECプラスの減産が需給をタイト化させる一方、北米やブラジルなどの増産が打ち消すとみられる。

次なるイベントは11月の米大統領選挙だ。足元の米生産量は再び過去最高水準に接近している。米大統領選挙でトランプ前大統領優勢となれば、エネルギー産業への追い風から一段と米石油生産量が増加するとの見方もある。以上から、24年の原油価格の予想レンジを1バレル=70~95ドルと想定する。

他方、ニューヨーク金先物価格は、1トロイオンス=2,100ドル台後半と最高値を更新した。ウクライナ戦争の長期化や、第5次中東戦争への警戒といった不安材料から買いが続いている。通常、米10年国債利回り(長期金利)の高止まり局面では、金利の付かない金は弱含むが、逆の状況である。

その背景には、米国の利下げ観測もある。米連邦準備制度理事会(FRB)は3月19、20日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、24年中に3回利下げする予想を維持した。量的引き締め(QT)の減速や停止に関する議論も開始され、米景気が堅調なことからソフトランディングへの期待が高まっている。市場は金価格が堅調になるとの観測を織り込み、先んじて買いに走っているようだ。足元では金ETF残高の流出に歯止めがかかり、中国の不動産市況の低迷から金市場に資金が流入しているとの観測もある。

米大統領選挙を巡る不透明感から、ドル離れの逃避先として資金が金市場に向かっている可能性もある。米国では、下院で24年度予算案が通過し、政府閉鎖が回避された。米国の財政赤字が拡大すると金価格が上昇するように、金価格が長期的な米国の財政収支と連動する傾向もある。

米議会予算局(CBO)によると、34年度には財政赤字が23年度比で1.5倍に膨らむ見通しだ。仮に米大統領選でトランプ氏が勝利すれば、再び拡張的な財政政策が繰り広げられ、財政赤字の予想額が積み増される懸念もある。以上から、24年末までの金価格を1トロイオンス=2,050~2,400ドルと予想する。

24年は原油がボックス相場、金は将来を織り込み堅調維持
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みずほ証券 マーケットストラテジスト/中島 三養子
週刊金融財政事情 2024年4月2日号