住宅ローン控除を受けながら、ふるさと納税の控除を同時に受けたいと考えている人もいるのではないだろうか。併用は可能だが、控除される金額が少なくなる場合があることには注意しておきたい。それぞれの仕組みや併用する際の注意点を解説する。

ふるさと納税と住宅ローン控除に関わるQ&A

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(画像=PIXTA)
Q


ふるさと納税って何?

出身地など好きな自治体を選んで寄付できる制度を「ふるさと納税」という。寄付のお礼として、地域の名産品などを受け取れるため、近年人気を集めている。寄付金のうち2,000円を超えた分は控除を受けられる。

出身地など好きな自治体を選んで寄付できる制度を「ふるさと納税」という。寄付のお礼として、地域の名産品などを受け取れるため、近年人気を集めている。寄付金のうち2,000円を超えた分は控除を受けられる。


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住宅ローン控除とは?

住宅ローンを利用して住宅の購入やリフォームなどを行った際に、税額控除を受けられる制度が「住宅ローン控除」である。年末時点でのローン残高の1%を、10年間にわたり所得税や住民税から控除できる。

住宅ローンを利用して住宅の購入やリフォームなどを行った際に、税額控除を受けられる制度が「住宅ローン控除」である。年末時点でのローン残高の1%を、10年間にわたり所得税や住民税から控除できる。


Q


ふるさと納税と住宅ローン控除は併用できる?

ふるさと納税の控除と住宅ローン控除は、併用することが可能である。手続き方法には、確定申告とワンストップ特例制度の2種類があり、確定申告の場合は税額軽減の恩恵を100%受けられない可能性がある。

ふるさと納税の控除と住宅ローン控除は、併用することが可能である。手続き方法には、確定申告とワンストップ特例制度の2種類があり、確定申告の場合は税額軽減の恩恵を100%受けられない可能性がある。

ふるさと納税の基礎知識

●任意の自治体に寄付できる制度

ふるさと納税とは、生まれ育った故郷や応援したい地域など、任意の自治体を選んで寄付できる制度である。手続きをすることで、寄付した金額のうち2,000円を超える部分について、所得税の還付や住民税の控除を受けられる。

地域ごとの名産品を楽しめるのも、ふるさと納税の魅力だ。寄付への感謝として、多くの自治体ではその地域の名産品などを、「お礼の品」として寄付した人に届けている。

自治体によっては寄付金の使い道を指定できることも、ふるさと納税の特徴である。子ども・高齢者・障害者支援、産業振興支援、環境美化事業など、自治体ごとにさまざまな使い道が用意されている。

●年収や家族構成により控除限度額が異なる

ふるさと納税で受けられる寄付金控除の金額には上限が定められており、ふるさと納税を行った人の年収や家族構成などにより、上限額が異なる。ケース別の控除上限目安は以下のとおりである。

 家族構成  年収  控除上限目安
 独身  500万円  6万1,000円
 夫婦  800万円  12万円
 夫婦と子ども1人(18歳)  1,500万円  36万8,000円

自分の控除上限額が知りたい場合は、金額の目安を手軽に算出できる「かんたんシミュレーション」を利用してみよう。

控除上限額かんたんシミュレーション | ふるさと納税 [ふるさとチョイス]

寄付金総額が控除上限額を超えた場合、実質的な自己負担額が2,000円を超えることもある。なお、寄付する自治体の数や回数に制限は設けられておらず、控除の対象となる1月1日からの1年間に、複数の自治体へ何回も寄付することが可能である。

ふるさと納税の控除を受ける手続きには「確定申告」と「ワンストップ特例制度」の2種類があることも覚えておこう。

●併用できる控除は何がある?

ふるさと納税は、住宅ローン控除や医療費控除と併用できる。

医療費控除は所得控除の一つであり、医療費控除を適用すると課税所得が減少する。課税所得が多いほどふるさと納税の控除上限額も多くなるため、医療費控除を併用するとふるさと納税の控除上限額は減少する可能性がある。なお、医療費控除と併用する場合は、確定申告が必須である。

ふるさと納税と併用できる控除については、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用する方法もある。iDeCoの掛金は、所得控除の「小規模企業共済等掛金控除」に該当するため、所得から全額差し引くことが可能である。

ただし、医療費控除との併用と同様、課税所得や住民税所得割額を減少させるため、ふるさと納税の控除上限額も減少するケースがある。

給与所得者であればiDeCoの控除は年末調整で手続きできるため、ふるさと納税の控除申請では、確定申告以外にワンストップ特例制度も利用できる。

住宅ローン控除の基礎知識

●住宅ローン残高から計算した金額を控除できる制度

住宅ローン控除とは、住宅ローンを利用してマイホームの新築・取得・増改築を行い、一定の要件を満たした場合、ローン残高を基に算出した金額を所得税や住民税から控除できる制度である。税制上は「住宅借入金等特別控除」という。

主な要件としては、「住宅の床面積が50平方メートル以上であること」、「10年以上にわたり分割して返済する方法になっていること」が挙げられる。一戸建てやマンションの新築住宅だけでなく、中古住宅の購入やリフォームでも利用できることが特徴である。

住宅ローン控除を受けるためには、入居した年の翌年に確定申告する必要がある。2年目以降は、給与所得者なら年末調整で控除の手続きができる。その際、住宅ローンの残高が証明できる書類を、会社へ提出しなければならない。

●控除限度額や控除期間について

住宅ローン控除の制度では、年末時点での住宅ローン残高の1%を、所得税額から控除できる。所得税で控除しきれない分は、不足分が住民税から控除される。控除期間は10年間である。

例えば、年末のローン残高が3,000万円、本来納付すべき所得税と住民税がそれぞれ20万円の場合を考えてみよう。

控除できる金額は、3,000万円の1%にあたる30万円である。最初に所得税から20万円を控除し、控除不足額の10万円は住民税から控除される。したがって、実際の納付額は、所得税が0円、住民税が10万円となる。

控除限度額は40万円と定められているため、年末のローン残高が4,000万円以上の場合でも、40万円を超えての控除はできない。

なお、ここで解説した控除額や期間は、2021年中に住宅へ住み始めた場合のものである。居住開始年や、そのほかさまざまな要素により、期間や計算方法などは異なっている。

ふるさと納税と住宅ローン控除を併用する2つのパターン

ふるさと納税の控除を受けるための手続き方法は、確定申告とワンストップ特例制度の2種類がある。それぞれの仕組みやポイントをチェックしておこう。

●確定申告によりふるさと納税の控除申請を行う場合

確定申告によりふるさと納税の控除を受けると、最初に所得控除という形でふるさと納税の控除が行われる。続いて、残った所得税に住宅ローンの控除が行われ、控除しきれなかった分は住民税から控除される。

しかし、住宅ローン控除に関しては、住民税から控除できる金額に上限が設定されているため、限度超過分が発生した場合は切り捨てとなる。この切り捨て分は、最終的にふるさと納税の自己負担分になる可能性があり、結果として損をすることになるため注意が必要だ。

なお、ふるさと納税の控除上限額は住民税所得割額に基づいて算出されるが、この場合の住民税所得割額は住宅ローン控除を適用する前のものを使用するため、住宅ローン控除を利用してふるさと納税の控除上限額に影響を与えることはない。

●ワンストップ特例制度でふるさと納税の控除を受ける場合

確定申告しなくてもふるさと納税の控除を受けられる制度のことを、「ワンストップ特例制度」という。寄付先が年間で5自治体以内であれば利用でき、簡単な申請で個人住民税の控除を受けられる。

ワンストップ特例制度では、控除額の全額が住民税から控除される。確定申告のように、住宅ローンとふるさと納税の控除が干渉し合わないため、併用してもお互いの控除限度額に影響しないことがメリットである。

ただし、どちらも税額を軽減する制度であるため、控除額が税額自体を超えている場合、それ以上の控除はできない。

併用する際のポイント

●ワンストップ特例制度を利用できないケース

ワンストップ特例制度は、確定申告の必要がない給与所得者や、ふるさと納税以外に確定申告するものがない人しか利用できない。

給与額が2,000万円を超えている人や、複数の事業所から給料をもらっている人など、確定申告する必要のある人は、ワンストップ特例制度を利用できないのだ。

住宅ローン控除との併用を考えている場合でも、住宅ローン控除を利用する最初の年は確定申告が必須であるため、ワンストップ特例制度は利用不可である。

また、ワンストップ特例制度の申請が済んでいても、医療費控除申請などの理由で後から確定申告した場合は、ワンストップ特例制度の申請は無効となり、あらためて確定申告しなければならない。

●ふるさと納税の控除上限額を超えて寄付した場合

確定申告により2つの控除を併用し、結果としてふるさと納税の寄付金が控除上限額を超えた場合は、超えた分が自己負担となる。

ふるさと納税は、実質負担金2,000円で地域のさまざまな名産品を受け取れることに大きな魅力がある。控除上限額を超過する金額が大きければ、返礼品の価値以上に出費してしまうことにもなりかねない。

ふるさと納税の控除上限額に影響を与えたくなければ、ワンストップ特例制度を選ぶようにしよう。

●iDeCoや医療費控除も追加併用可能

ふるさと納税の控除と住宅ローン控除の併用には、さらにiDeCoの小規模企業共済等掛金控除と医療費控除も追加で併用できる。

ただし、既述のようにどちらも所得控除の一つであり、確定申告する場合はふるさと納税の控除上限額に影響を与える可能性がある。

医療費控除は確定申告が必須であるため、ほかのどの控除と併用するケースでも、確定申告しか選択できない。しかし、小規模企業共済等掛金控除は年末調整で申請できるため、ワンストップ特例制度が利用可能である。