「投資信託の確定申告はどうすれば良いのだろう?」
とお悩みの方も多いのではないでしょうか?

投資信託の確定申告は取引口座の種類により、する必要があるもの、必要ないものがあります。また、確定申告の必要がない口座でも、あえて確定申告すれば節税になるケースもあります。この記事では、投資信託の確定申告についての基本を解説していきます。

投資信託とは?

確定申告
(画像=weerachai/stock.adobe.com)

投資信託とは、投資家から集めた比較的少ない資金を一つの大きな資金としてまとめ、投資の専門家が運用を行うものです。銀行や証券会社、郵便局などの販売会社で販売された投資信託は、信託銀行に保管されます。保管された資金は運用会社の指示のもと、実際に運用されます。

投資信託の運用は一般的に、資金を複数の投資商品に対して投資する「分散投資」で行われます。運用がうまく行った場合の利益、およびうまく行かなかった場合の損失は、どちらも投資家のものとなります。

投資信託のメリット3つ

投資信託のメリットは以下の通りです。

  1. 運用を専門家に任せるので初心者でも始めやすい
    投資信託の第一のメリットは、運用を専門家に任せるので初心者でも比較的始めやすいことです。資産運用は一般的に、さまざまな知識が必要で、売買のタイミングを判断するのも簡単ではありません。しかし、投資信託は運用を専門家が行うため、高度な知識や判断がさほど必要なく、初心者でも取り組みやすいのが特徴です。

  2. 少額での投資が可能
    株などの投資商品を購入するためには、ある程度まとまった資金が必要です。しかし、投資信託は複数の投資家から集めた資金をまとめて運用を行うため、投資家は比較的少額の資金で投資ができます。多くの投資信託は1万円程度~購入できます。ネット証券では100円~購入できるサービスも多くあります。

  3. 分散投資でリスクを軽減できる
    分散投資とは値動きが異なる複数の資産に投資し、リスクを軽減することです。投資の基本とされますが、個人が分散投資のために複数の投資商品を購入するのは、多額の資金が必要となるため困難です。投資信託なら、少額の資金での分散投資が可能です。

投資信託のデメリット2つ

投資信託のデメリットには以下のようなものがあります。

  1. 損失が出ることがある
    投資信託は銀行の定期預金のように元本が保証されていません。運用は専門家により行われるとはいえ、元本割れの損失が出ることもあります。

  2. 手数料がかかる
    投資信託を行うには、販売手数料や信託報酬、信託財産留保額などの手数料がかかることが多いです。

投資信託で税金が発生するタイミング3つ

投資信託で税金が発生するタイミングは、利益が発生したときです。投資信託で発生する利益、およびその際にかかる税金について解説します。

分配金が支払われたとき

投資信託で分配金を受け取ったときには税金がかかる場合があります。

分配金には「普通分配金」と「特別分配金」の2種類があります。一般的には、分配金を受け取ると、投資信託の価格である基準価額は下落します。下落した基準価額が元本より値上がりしている場合には、分配金は普通分配金となり、全額税金がかかります。

それに対して、下落した基準価額が元本を下回った場合には、分配金は特別分配金と呼ばれます。特別分配金は、元本を上回った部分については税金がかかり、元本を下回った部分については非課税です。

分配金にかかる税金の税率は20.315%です。内訳は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、および住民税5%となります。

売却益が出たとき

次に投資信託では、売却益が出たときに税金がかかります。売却益とは、運用している投資信託を販売会社に買い取ってもらう際の利益のことです。売却時の基準価額が、購入時の元本を上回っている分が売却益となります。売却益にも、分配金と同様の20.315%の税金がかかります。

償還のとき

投資信託は運用期間があらかじめ決められています。運用期間が終了すると、その時点での投資信託の基準価額が投資家に返還され、これを「償還」と呼びます。償還時の基準価額が元本を上回っていれば、上回った分が利益となり、これに税金がかかります。税金の税率は、やはり分配金・売却益と同様の20.315%です。

確定申告が必要・不要となる投資信託口座の種類3つ

以上のように投資信託では、分配金・売却益および償還時の利益に税金がかかります。しかし確定申告は、利用している取引口座により、する必要があるケースとないケースとがあります。取引口座による確定申告の要・不要を見ていきましょう。

特定口座(源泉徴収あり)

利用している口座が「特定口座(源泉徴収あり)」の場合は、投資信託で利益が出ても確定申告の必要はありません。販売会社が自動的に、利益に対して税金を徴収(源泉徴収)してくれるからです。「確定申告が面倒だから」の理由で、「特定口座(源泉徴収あり)」を利用している人は多いことでしょう。

特定口座(源泉徴収なし)

「特別口座(源泉徴収なし)」を利用している場合には、販売会社は利益が出ていれば税金の計算まではしてくれます。しかし、源泉徴収まではしてくれないため、自分で確定申告をして税金を支払う必要があります。ただし、利益が出ていない場合には、確定申告の必要はありません。

一般口座

「一般口座」では販売会社は、利益や損失の計算もしてくれません。したがって、まず損益を自分で計算し、利益が出ている場合には確定申告をして税金を支払う必要があります。ただし、「特定口座(源泉徴収なし)」の場合と同様に、利益が出ていなければ確定申告の必要はありません。

また、「特定口座(源泉徴収なし)」と「一般口座」の場合でも、会社員で、給与以外の所得が20万円以下の場合は、たとえ投資信託で利益が出ても確定申告の必要はありません。

確定申告すれば節税になるケース3つ

投資信託では、利用している口座の種類ごとに、利益が出た場合に確定申告の必要があるケース、必要がないケースがあることをご説明してきました。「特定口座(源泉徴収なし)」と「一般口座」の場合は確定申告が必要で、一方「特定口座(源泉徴収あり)」の場合は不要です。

ところが実は、たとえ「特定口座(源泉徴収なし)」を利用していても、確定申告をすることで節税になるケースがあります。それは、どのような場合なのでしょうか。

複数の証券会社で取引している場合

確定申告すれば節税になるケースとしてまずあげられるのは、複数の取引口座を利用して取引し、いずれかの口座で損失が出ている場合です。この場合には確定申告で「損益通算」ができるため、節税になります。

損益通算とは、損失と利益を合算したうえで税金を計算することです。たとえば、A口座とB口座の2つを利用して取引し、A口座では100万円の利益が、B口座では▲50万円の損失が出ているとしてみましょう。

A口座とB口座それぞれで源泉徴収された場合、A口座の利益には20.315%の税金がかかりますから、約20万円の税金を取られることになります。それにたいしてB口座は利益が出ていませんから、税金はかかりません。

それに対して、確定申告で損益通算を行えば、A口座の利益100万円とB口座の損失▲50万円を合算し、「全体として50万円の利益」として税金がかかります。50万円に20.315%の税金がかかれば、税額は10万円です。つまり、確定申告で損益通算を行えば、この例でいえば「10万円」もの税金を節約できることになります。

「特定口座(源泉徴収あり)」を利用している場合でも、あらかじめ申請すれば、確定申告を自分でするように変更できます。複数の口座を利用し、口座のどれかで損失が出ている場合は、確定申告するのがおすすめです。

繰越控除を受ける場合

確定申告で節税になるケースとして次にあげられるのは「繰越控除」を受ける場合です。繰越控除とは、損益通算をしても相殺しきれなかった損失について、その後3年間にわたり利益から差し引けるというものです。

上の例と同様に、A口座とB口座の2つの口座で取引を行っているとしましょう。A口座では100万円の利益が出ているとし、B口座では今度は▲150万円の損失が出ているとします。

▲150万円の損失は、100万円の利益と損益通算をしても▲50万円が残ります。このように損益通算しても残ってしまった損失は、確定申告で繰越控除を受けることにより、その後3年間にわたる利益と相殺できます。翌年に50万円の利益が出れば、これを繰り越しされた▲50万円の損失と相殺すれば、利益は0円、税金が全くかからないことになります。

このように確定申告の繰越控除を利用すれば、将来の利益にかかる税金を少なくすることもできるのです。

配当控除を受ける場合

確定申告をすれば節税になる3つ目のケースは「配当控除」を受ける場合です。

配当金は、「特定口座(源泉徴収あり)」で源泉徴収される場合は、所得税として15%の税率で税金を取られます。ところが、確定申告で「総合課税」を選択し、配当金の所得を他の所得と合算して申告した場合には、配当所得にたいして10%の配当控除が受けられるため、正味の税率は総合課税所得により「0%~40%」となります。

源泉徴収の税率15%より正味税率が低いのは、総合課税所得が900万円以下の場合です。したがって、この場合には所得税に関しては、確定申告をしたほうが節税になります。

ただし、住民税については、総合課税を選択すると源泉徴収より税率が高くなります。したがって、確定申告で税金を申告するのは所得税だけにして、住民税は源泉徴収のままにしておくことが必要です。

全く確定申告しなくて良いケース

さて、最後に全く確定申告しなくて良いケースをご紹介しましょう。それは、NISAやiDeCoを利用する場合です。

NISAとは「少額投資非課税制度」のこと。iDeCoとは「確定拠出年金」のことです。どちらも投資信託の配当金や運用益、償還時の利益に対する税金がすべて非課税になります。

したがって、どれだけ利益が出たとしても、確定申告の必要はありません。ただし、NISAもiDeCoも他の口座との損益通算はできないため、損失が出た場合の確定申告による節税もできません。

しかし、「全く確定申告のことを考えなくて良い」ことは、面倒なことが嫌いな人にとっては大きなメリットだといえるのではないでしょうか。

投資信託は適切に確定申告して節税しよう

投資信託で利益が出た際の確定申告は、取引口座の種類により必要な場合と不要な場合とがあります。しかし、確定申告が不要な口座を利用している場合でも、確定申告することにより節税できるケースもあります。投資信託の確定申告は適切に行い、税金を節約していきましょう。

※税務の詳細はお近くの税理士や公認会計士にご相談ください。(提供:Wealth Road